
新築の工場や物流倉庫で、まだ操業も始まっていないのに鳩が飛来しているという状況は珍しくありません。
「操業が始まってから考えればいい」と判断されることが多い一方で、その順番で進めると、対策の費用も手間も増えます。
この記事では、竣工後・稼働前という短い期間に防鳥工事を差し込むという選択について、実際の施工事例と公的資料をもとに整理します。
目次
建築中に鳩が飛来しているのであれば、必要です。
補足解説
鳩は、雨風がしのげて天敵が来ない場所を営巣地に選びます。工場や倉庫の軒下・鉄骨の梁・庇の裏は、この条件を満たします。
そして重要なのは、建物が完成した時点で、その条件は完成しているという点です。操業が始まるかどうかは、鳩にとって関係がありません。
当社が橿原市の新築工場でご相談をいただいたのも、まだ糞害が発生していない段階でした。
建屋の建築中から鳩が飛来していた。工場が稼働してからの被害が心配だ。
これがご相談の内容です。この判断が、結果的に最も費用を抑えました。

竣工後、稼働が始まる前に軒下7,200㎡へ防鳥ネットを設置しました。工期は6日間です。稼働後も、鳩による糞害は発生していません。
7,200㎡を6日で終えられたのは、稼働前だったからです。 操業中であれば、作業時間の制約と工程の分割によって、この日数では収まりません。
清掃工程が不要で、操業を止めず、鳩が場所を覚える前に塞げるためです。
補足解説
理由は3つあります。
被害が出てからの防鳥工事は、「糞の清掃 → 消毒 → 防鳥工事」という順序になります。
新築であれば、最初の2工程がありません。 糞が堆積していないため、清掃するものがないからです。
糞の量は放置した期間に比例します。数年放置された現場では、清掃と消毒だけで工事全体の大きな割合を占めることがあります。
稼働中の工場で防鳥工事を行う場合、次の調整が必要になります。
| 調整項目 | 内容 |
|---|---|
| 作業時間 | 稼働時間を避け、夜間・休日に作業する |
| 工程分割 | 一度に全体を止められないため、区画ごとに分ける |
| 動線確保 | フォークリフトやトラックの動線を避ける |
| 製品保護 | 落下物・粉塵から製品を守る養生 |
稼働前であれば、これらの制約がありません。 橿原市の案件では7,200㎡という規模でしたが、一度に作業を進めて6日間で完了しています。
鳩は帰巣本能が強く、一度営巣に成功した場所への執着が強い鳥です。
逆に言えば、まだ「とまっているだけ」の段階で塞いでしまえば、その建物は候補から外れます。 営巣の成功体験を作らせないことが、最も確実な予防になります。
搬入・搬出口の庇下、軒下、鉄骨の梁、設備架台の下です。
補足解説
いずれも共通するのは、屋根がかかっていて、横からの風雨が入りにくく、人が近づきにくいという条件です。
| 場所 | 鳩にとっての利点 |
|---|---|
| 搬入・搬出口の庇下 | 屋根があり、梁が水平に通っている。人は下を通るだけ |
| 軒下・庇の裏 | 雨がかからず、外から見えにくい |
| 鉄骨の梁・ブレース | とまるのに適した幅がある |
| 屋外設備の架台下 | 囲われていて、天敵が入れない |
| 換気口・配管の開口部 | 内部に入り込める |

特に見落とされやすいのが、搬入・搬出口の庇下です。 荷役のために設けられた庇は、鳩にとって理想的な構造になっています。屋根があり、水平な梁が通っていて、人は下を通り過ぎるだけです。
しかも、真下は荷物を扱う場所です。糞が落ちれば、製品にも作業者にもかかります。
この場所は、建物の性格上どうしても必要な構造です。 設計で無くすことはできません。だからこそ、最初からネットで塞いでおく価値があります。
予兆と考えてください。
補足解説
建築中に鳩が飛来しているということは、その建物がすでに鳩から「適地」と判断されているということです。
建物は完成すれば何年も残ります。構造が変わらない以上、鳩の評価も変わりません。
操業してから被害が出るのは、時間の問題です。
「まだ糞が落ちていないから大丈夫」という判断は、順序が逆になっています。 糞が落ちている状態は、すでに営巣か定着が進んでいる状態です。
法律上、すぐに撤去できなくなる場合があります。
補足解説
鳩(ドバト)は鳥獣保護管理法の保護対象です。
環境省の捕獲許可制度の概要では、鳥獣の捕獲等(卵の採取等を含む)には原則として許可が必要とされています。
実務上の線引きは次のとおりです。
| 巣の状態 | 撤去 |
|---|---|
| 巣材だけ、卵もヒナもいない | 可能 |
| 卵がある | 許可が必要 |
| ヒナがいる | 許可が必要 |
つまり、営巣され卵を産まれた時点で、工事のスケジュールが自社の都合では決まらなくなります。
操業開始日が決まっている新築案件で、「卵があるため、ヒナが巣立つまで着手できません」という状況は、避けたい事態のはずです。
稼働前に塞いでしまえば、この問題そのものが発生しません。
出典:環境省「鳥獣の保護及び管理」、環境省「捕獲許可制度の概要」
開口部からの侵入防止という考え方に含まれます。
補足解説
食品衛生法に基づく衛生管理の基準(別表第17)では、施設の構造について次のように定められています。
窓及び出入口は、原則として開放したままにしないこと。開放したままの状態にする場合にあつては、じん埃、ねずみ及び昆虫等の侵入を防止する措置を講ずること
また、ねずみ及び昆虫対策として次の記載があります。
窓、ドア、吸排気口の網戸、トラップ及び排水溝の蓋等の設置により、ねずみ及び昆虫の施設内への侵入を防止すること
ここで正確にお伝えしておきます。 この基準が名指ししているのは「ねずみ及び昆虫」であり、鳥類ではありません。
ただし、開口部から異物が侵入することを防ぐという考え方は、鳥にもそのまま当てはまります。鳩の羽毛と糞は、異物混入の原因になり得ます。
実際、鳩の巣にはダニなどの害虫が発生する可能性もあります。 巣が建物に残れば、そこが昆虫の発生源になります。この点では、基準が直接想定している対象とも無関係ではありません。
当社にご相談いただく食品関連の工場では、取引先による監査の際に、鳥に関する指摘を多数受けたというお話を伺っています。
基準が名指ししていなくても、監査する側は「外部から異物が入る経路」として鳥を見ています。
監査で指摘を受けてから対策すると、是正報告までの期限が決まります。 稼働中の工場で工程を組む制約と、期限の制約が同時にかかることになります。
新築の段階で塞いでおけば、この項目は最初から指摘されません。
出典:厚生労働省「衛生管理の基準の解説」(PDF)
吸い込むことによる感染症のリスクが、公的資料で示されています。
補足解説
厚生労働省の動物由来感染症に関する資料には、オウム病について次の記載があります。
インコ、オウム、ハト等の糞に含まれる菌を吸い込んだり、口移しでエサを与えることによっても感染する。
オウム病について、国の感染症情報では次のように説明されています。
主な感染経路は感染した鳥の排泄物に含まれる菌の吸入である
潜伏期間は1から2週間。突然の高熱で発症し、頭痛や筋肉痛などの全身症状と咳嗽などの呼吸器症状が出現
重症化した場合は、多臓器不全などにより死に至ることがあるとされています。
工場で問題になるのは、乾燥した糞が粉塵となる点です。 堆積した糞を清掃する際、粉塵を吸い込むリスクがあります。
このため、堆積した糞の清掃は防護具を着けた作業になります。 従業員の方が通常の清掃と同じ感覚で作業されることは、おすすめしていません。
出典:厚生労働省「人と動物には共通した病気があることを、あなたのためにも、動物のためにも知っておきましょう」(PDF)、国立健康危機管理研究機構「オウム病」
設置方法によります。橿原市の現場では、見上げてもネットが分かりにくい状態です。
補足解説
新築の建物では、外観を損なわないかどうかが判断材料になります。特に本社機能を併設する施設や、来客のある施設では重要です。

これが施工後の軒下です。
ネットは、鉄骨の梁に沿って張ることで目立ちにくくなります。反対に、梁の形状を無視して平面的に張ると、ネットの存在が際立ちます。
「防鳥はしたいが、建物の見た目を損ないたくない」というご要望は、設計段階でお伝えください。 仕上がりは、資材の選定と張り方で変わります。
できます。ただし、条件が増えます。
補足解説
稼働中の施工が不可能なわけではありません。当社でも、稼働中の工場での施工実績があります。
ただし、次の点が変わります。
| 項目 | 稼働前 | 稼働後 |
|---|---|---|
| 清掃・消毒 | 不要 | 被害の程度により必要 |
| 作業時間 | 制約なし | 夜間・休日などの調整 |
| 工程 | 一度に進められる | 区画ごとに分割 |
| 養生 | 最小限 | 製品・設備の保護が必要 |
| 工期 | 短い(7,200㎡で6日) | 長くなる |
「稼働前でなければ手遅れ」という話ではありません。 ただ、同じ工事を行うのに条件が増えるため、費用と工期に差が出ます。
すでに操業中の施設については、▶ 工場の鳩対策とは?被害レベルに応じた対策方法を解説 で、被害の段階ごとの対策を解説しています。費用の考え方は 鳩の駆除費用 をご覧ください。
面積の単価よりも、「高所作業をどう行うか」で総額が変わります。
補足解説
工場・倉庫の防鳥工事について、面積だけを伺って金額をお出しすることはしていません。 同じ面積でも、現場の条件で総額が大きく変わるためです。
金額を左右するのは、主に次の5点です。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 高所作業の方法 | 足場・高所作業車・ロープアクセスのどれを使うか |
| 天井の高さと形状 | 梁の本数、設備の有無、張る面の複雑さ |
| かわすべき設備 | 照明・消防設備・配管を避けて張る必要があるか |
| 清掃・消毒の要否 | 糞の堆積があるかどうか |
| 稼働状況 | 操業中か、稼働前か |
| 方法 | 費用への影響 |
|---|---|
| 足場を組む | 設置・解体だけで大きな費用が発生します |
| 高所作業車 | 台数と稼働日数で決まります |
| ロープアクセス | 足場・作業車が不要な場合があります |
同じ面積・同じ資材でも、ここで総額が変わります。
相見積もりを取られる際は、金額の大小だけでなく、各社がどの方法を前提にしているかをご確認ください。前提が違う見積もりは、比較しても意味がありません。
上の5要素のうち、稼働前の案件では3つが有利に働きます。
| 要素 | 稼働前の場合 |
|---|---|
| 清掃・消毒 | 不要(糞が堆積していないため) |
| 稼働状況 | 制約なし(夜間・休日の割増や工程分割が不要) |
| 高所作業 | 選択肢が広い(動線や設備の制約が少ない) |
同じ建物・同じ面積でも、稼働前と被害発生後では前提が変わります。 これが、稼働前をおすすめする理由です。
具体的な金額は、現地を確認したうえでお出しします。図面の段階でも、概算のご相談は承ります。
個人・小規模の費用の考え方については鳩の駆除費用をご覧ください。
元請のゼネコン様経由と、施主様からの直接依頼の両方があります。
補足解説
新築案件では、次のいずれかの経路になります。
| 経路 | 特徴 |
|---|---|
| ゼネコン・元請経由 | 建築工程に組み込まれます。竣工前に完了できます |
| 施主様から直接 | 竣工後の発注になることが多くなります |
| 設計事務所からのご相談 | 設計段階で防鳥を織り込めます |
最も工程に無理がないのは、設計段階または建築中にご相談いただく形です。 足場が残っている時期であれば、その足場を利用できる場合もあります。
当社は建設業許可(京都府知事許可(般-7)第42676号)を取得しており、国土交通省の建設業者検索システムでご確認いただけます。組下工事・直接請負のどちらにも対応します。
高所作業車、ロープアクセスのいずれにも対応し、法令に沿った体制で施工します。
補足解説
工場・倉庫の防鳥工事は、ほぼすべてが高所作業です。
ロープを使う作業については、平成28年1月1日から労働安全衛生規則が改正され、事業者に次の事項が義務づけられています。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 特別教育 | 学科4時間・実技3時間 |
| 作業計画の作成 | 方法、順序、支持物、ロープの種類と強度など |
| ライフラインの設置 | メインロープとは別の支持物に緊結 |
| 作業指揮者の選任 | 作業の指揮、点検、監視 |
当社スタッフは全員がロープ高所作業特別教育を修了しています。
高所作業車を使用する現場でも、資格者が作業にあたります。施工中の安全管理は、発注者様の管理責任にも関わる部分です。 体制についてご不明な点があれば、お問い合わせの際にお尋ねください。
出典:厚生労働省「ロープ高所作業」(職場のあんぜんサイト)、厚生労働省「ロープ高所作業についての規定が新設されました」
| タイミング | 状況 |
|---|---|
| 設計段階 | 防鳥を織り込める。最も自由度が高い |
| 建築中 | 足場を利用できる場合がある |
| 竣工後・稼働前 | 清掃不要・操業の制約なし。7,200㎡を6日で完了 |
| 稼働後・被害前 | 操業の調整が必要になる |
| 被害発生後 | 清掃・消毒が加わる。営巣されると法的制約も |
| 監査で指摘後 | 上記に加え、是正の期限が重なる |
新築案件でよくあるのは、「操業が落ち着いてから考えよう」という判断です。 しかし、その時点で鳩はすでに営巣しています。
建築中に鳩が飛来しているのであれば、それは予兆です。 竣工から稼働までの短い期間に工事を差し込めるかどうかで、その後の数年が変わります。
当社は奈良県橿原市の新築工場(軒下7,200㎡・工期6日)をはじめ、工場・物流倉庫・公共施設の防鳥工事を手がけてきました。
※距離のある地域は、現地調査が有料となる場合がございます。お問い合わせの際にご相談ください。
法人向けサービスの詳細は法人のお客様のページでご案内しています。